演題2

障害者スポーツを行うパラアスリートの日常生活におけるニーズに関する研究 
―食事、排泄、活動・休息に着目して― 

〇大川 真実 徳本 弘子
埼玉県立大学 

I.はじめに

 スポーツ科学の分野においてパラアスリートの生活に焦点をあてた研究は少ない。地域の生活者であるパラアスリートの生活に着目し日常生活におけるニーズを知ることで、 対象者へのパフォーマンス向上の支援が可能となると考えた。

II.研究目的

 パラアスリートを対象に日常生活における食、排泄、活動・休息の実際を把握し、パラアスリートのニーズを抽出し支援について考察することを目的とする。

III.研究方法

 本研究は、対象者に参加の自由意志、プライバシーの配慮、研究不参加による不利益がないことを書面、口頭で説明し承諾が得られた JWBF 加盟チームの持ち点 1.0 点、1.5 点 の現役車いすバスケットボールプレーヤー(以下、パラアスリート)に基本情報調査後、 面接調査を実施した。データの分析方法は、基本情報は単純集計、面接時の発話データは scat 分析を行った。(埼玉県立大学研究倫理委員会承認番号:20005)

IV.結果

 11 名の面接調査データを得た。受傷年数は 3 年から 20 数年、競技歴は 2 年から 20 年であった。日常生活ではセルフケア獲得段階に違いがみられ、特に受傷年数が 3 年未満 と、3 年以上のパラアスリートで大きな差がみられた。
 特に、経験 3 年以上の対象者は、【食事の量や内容の管理の必要性を理解】し、専門家 の協力を得る、独学で知識を得るなどして自己管理を行っていた。
 排泄は【自己管理の継続の必要性を理解し、排尿コントロールを実施】、特に、導尿実 施者は【尿路感染予防のために意識的な水分摂取】を行っていた。
 活動・休息に関して、【練習時間を確保】する一方で、【休息の必要性を理解するもアフ ターケア不足の自覚】があった。練習後の【身体ケアを専門職に受けたい】希望があるが サポートを受けにくい対象者もいた。
 受傷年数 3 年未満の対象者は〈食事内容に関心のない〉状況で、排泄についても〈頻 回な尿路感染〉を起こしており、活動・休息についても活動後の〈アフターケアへの関心 が向けられていない〉ことが分かった。

V.考察

 パラアスリートは、日常生活の実態からニーズも競技年数によって異なっており、看護職がパラアスリートのニーズを把握するためには、対象者の身体をアセスメントした うえで、セルフケア獲得段階を把握する必要がある、さらに、受傷経験の浅いパラアスリ ートは、セルフケア獲得のニーズがあると考えられる。したがってセルフケア獲得の支 援が必要であると考える。